シャンパーニュ地方といえば、世界最高峰のスパークリングワインを生み出す地。その品質を保証するのが、かつて存在した「エシェル・デ・クリュ(Échelle des Crus)」と呼ばれる格付け制度です。ブルゴーニュのように畑単位での格付けではなく、シャンパーニュでは 村単位 で格付けが行われ、ブドウの品質や価格に影響を与えていました。
現在、この制度は公式には廃止されましたが、多くのワイン愛好家や生産者の間で依然として重要視されています。本記事では、シャンパーニュ地方の格付けの歴史、現在の影響、そして美味しいシャンパーニュ選びのヒントを紹介します。
シャンパーニュ地方の格付けの歴史
19世紀後半、シャンパーニュ地方では、ブドウを栽培する村ごとに品質の違いがあることが明らかになりました。これを基に1911年に「エシェル・デ・クリュ制度」が導入され、各村が0〜100%のスケールで評価されるようになったのです。
このスケールによって、村の格付けが決まり、ブドウの取引価格も変動しました。
エシェル・デ・クリュの3段階
格付け | 評価スコア | 主な村 |
---|---|---|
グラン・クリュ(Grand Cru) | 100% | アイ(Aÿ)、アンボネイ(Ambonnay)、アヴィズ(Avize)など 17村 |
プルミエ・クリュ(Premier Cru) | 90〜99% | トレパイユ(Trépail)、キュミエール(Cumières)など 44村 |
その他の村 | 80〜89% | シャンパーニュ地方全体で約 320村 |
ポイント
- グラン・クリュの村で収穫されたブドウは 100%の価格評価を受け、最高値で取引された
- プルミエ・クリュの村のブドウは 90〜99%の評価を受け、それに応じた価格で取引された
- 残りの村のブドウは80〜89%の評価で価格が決定された
しかし、この制度は2000年代に公式には廃止されました。理由の一つは、村単位での格付けが 畑ごとの個性を十分に反映していないという批判があったためです。
現在のシャンパーニュの格付けの影響
現在、エシェル・デ・クリュ制度は形式上存在しませんが、多くの生産者やシャンパーニュ愛好家にとって、グラン・クリュやプルミエ・クリュの評価は依然として価値ある指標です。
なぜ今も重要視されるのか?
- 伝統的な評価基準 として認識されている
- メゾン(大手生産者)も「グラン・クリュ」のブドウを好んで使用
- 単一畑(クロ・デュ・メニルなど)を重視する流れも強まっている
特にグラン・クリュの村からのブドウを使用したシャンパーニュは、エレガントで長期熟成にも向くため、高い評価を受け続けています。
シャンパーニュの「グラン・クリュ村」を知る
代表的なグラン・クリュ村とその特徴
村名 | ブドウ品種 | 特徴 |
---|---|---|
アイ(Aÿ) | ピノ・ノワール | 力強くコクのあるシャンパーニュ |
アンボネイ(Ambonnay) | ピノ・ノワール | フルボディで濃厚な赤系果実のニュアンス |
ヴェルズネイ(Verzenay) | ピノ・ノワール | 繊細で酸が美しく、エレガントなシャンパーニュ |
アヴィズ(Avize) | シャルドネ | 鋭い酸とミネラル感が際立つブラン・ド・ブラン |
ル・メニル・シュル・オジェ(Le Mesnil-sur-Oger) | シャルドネ | クリスピーで熟成向きのシャルドネ |
ポイント
- ピノ・ノワール主体のグラン・クリュ村はパワフルでリッチなスタイル
- シャルドネ主体のグラン・クリュ村はエレガントでミネラル感の強いスタイル
シャンパーニュを選ぶ際のヒント
シャンパーニュを選ぶ際、ラベルに「グラン・クリュ」や「プルミエ・クリュ」と書かれていることは少ないですが、生産者名や村名を知ることで、より質の高いシャンパーニュを見つけることができます。
ワインショップやレストランで選ぶ際のポイント
- グラン・クリュ村の単一畑ものを探す(例:クリュッグ「クロ・デュ・メニル」)
- ブラン・ド・ブラン(シャルドネ100%)はアヴィズやル・メニル・シュル・オジェ産を選ぶと◎
- ブラン・ド・ノワール(ピノ・ノワール100%)はアイやアンボネイ産のものが濃厚でおすすめ
- シャンパーニュ・メゾンが使用するブドウの村に注目(例:ボランジェはアイを多く使用)
有名なシャンパンメゾンと格付け制度の関係
有名なシャンパンメゾン(グラン・メゾン)は、この村単位の格付けとは別に、それぞれのブランドの歴史や品質基準、市場での評価によって名声を確立しています。
グラン・メゾン(大手メゾン)
世界的な知名度を持ち、大規模な生産体制を誇るメゾンです。自社畑を所有する一方で、多くの契約農家からブドウを仕入れ、ブランド独自の「ハウススタイル」を守り続けています。
- モエ・エ・シャンドン(Moët & Chandon)
- ヴーヴ・クリコ(Veuve Clicquot)
- ルイ・ロデレール(Louis Roederer)
- ポル・ロジェ(Pol Roger)
- テタンジェ(Taittinger)
- マム(G.H. Mumm)
- ペリエ・ジュエ(Perrier-Jouët)
プレスティージュ・キュヴェを持つメゾン
特に高品質なブドウを使用し、長期間熟成させた「プレスティージュ・キュヴェ」と呼ばれる最高級のシャンパンを生産するメゾンです。これらのキュヴェは、特別な年や限定生産となることが多く、コレクターや愛好家から高い評価を受けています。
- ドン・ペリニヨン(Dom Pérignon) ー モエ・エ・シャンドンが手がけるプレスティージュ・キュヴェ
- クリュッグ(Krug) ー 単一年のミレジメと、複数年をブレンドしたグランド・キュヴェが特徴
- ルイ・ロデレール クリスタル(Louis Roederer Cristal) ー ロシア皇帝のために作られた伝説のシャンパン
- サロン(Salon) ー 特別なヴィンテージの年にしかリリースされない希少なブランド
独立系生産者(レコルタン・マニピュラン / RM)
自社畑のブドウのみを使用し、自ら醸造・瓶詰めを行う独立系生産者(RM)。規模は小さいものの、テロワールを色濃く反映した個性的なシャンパンが特徴です。
- ジャック・セロス(Jacques Selosse)
- エグリ・ウーリエ(Egly-Ouriet)
- ピエール・ペテルス(Pierre Péters)
格付け制度とメゾンの関係
伝統的な「エシェル・デ・クリュ(村ごとの格付け制度)」は現在では廃止されていますが、多くのトップメゾンは歴史的にグラン・クリュ(100%)やプルミエ・クリュ(90~99%)の畑のブドウを使用することが多いです。
例えば、
- ルイ・ロデレールの「クリスタル」は主にグラン・クリュのブドウから造られます。
- サロン(Salon)もコート・デ・ブラン地区のグラン・クリュ「ル・メニル・シュル・オジェ」のシャルドネのみを使用しています。
このように、シャンパーニュの格付け制度とメゾンのブランド価値は密接に関係しています。シャンパン選びの際には、メゾンのスタイルだけでなく、使用される畑の格付けにも注目してみると、より深く楽しむことができるでしょう。
まとめ:シャンパーニュの格付けを知れば、選ぶ楽しみが広がる!
- シャンパーニュ地方の格付けは 村単位(エシェル・デ・クリュ)で決められていた
- グラン・クリュ(17村)、プルミエ・クリュ(44村)という区分は公式には廃止されたが、今も高品質の指標として使われる
- ピノ・ノワール主体の村、シャルドネ主体の村があり、それぞれのスタイルを知ると面白い
- グラン・クリュ村のシャンパーニュは、より繊細で奥深い味わいを楽しめる
シャンパーニュの格付けを知ることで、あなたの選ぶ一本がもっと特別なものになります。次回のワインショップやレストランで、ぜひ「グラン・クリュ村のシャンパーニュ」を探してみてください!
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